風に吹かれて


そこをクリックすると、街角の写真が現れる。

古い映画館の看板。午後の公園でチェスをする老人たち。石畳の路地を急ぐ自転車。街路樹の向こうに見える、少しばかり曇った空。
写真の下には、短い文章が添えられている。
「人生は、予定どおりに進まないから面白い。風に吹かれて道を外れたとき、思いがけない風景に出会うことがある」
君はそれを読んで、いつも少し考え込む。
「ねえ、あのときもそうだったわね」
あのとき――。
僕らが初めて出会ったのは、旅先の小さな書店だった。僕は棚の奥から一冊の本を取り出そうとしていて、君も同じ本に手を伸ばした。
指先が触れた。
それだけのことだった。
けれど、人生というのは不思議なもので、ほんの一瞬の出来事が、その後の長い時間を変えてしまうことがある。
あの日、窓の外では風が吹いていた。